プレス情報
2020年05月14日
プレス情報-脳機能の根幹に関わる脳表層の微小構造を発見!
今回は、4月26日に英国科学誌『Cerebral Cortex』に掲載された論文、”Pyramid-Shape Crossings and Intercrossing Fibers Are Key Elements for Construction of the Neural Network in the Superficial White Matter of the Human Cerebrum”について紹介いたします。
金沢大学のホームページでの研究トピックでも紹介されております(https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/79256)ので、その文章を引用して掲載いたします。
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金沢大学医薬保健研究域医学系の中田光俊教授,篠原治道客員教授,尾﨑紀之教授,堀修教授および医薬保健研究域保健学系の中嶋理帆助教の共同研究グループは,人間の脳の精細な解剖とMRI画像での描出により,脳の表層に神経線維の集まる微小構造体を発見しました。
ヒトの脳は,しわのくぼみ(脳溝)およびしわとしわの間の盛り上がり(脳回)で構成されており,無数の神経線維がネットワークを形成することで脳機能を司っています。深層の長い神経線維の走行は知られていますが,脳表近くを走る短い神経線維の構造は解剖の手技やMRI画像での描出が難しいことから,これまで明らかになっていませんでした。
本研究では,精細な脳表層の解剖と脳白質線維の描出を可能とする拡散スペクトルイメージング(脳の神経線維の走行を写し出すMRI)を用いて,脳回同士が交差するところどころに短い神経線維が収束するピラミッド型の神経線維収束ポイントを発見し,crossingと名付けました。Crossingは一側の大脳半球に100カ所程度存在しており,crossingにおいて脳回間の神経線維のみならず脳回内の神経線維をつないでいることを明らかにしました。
本研究で発見した脳表層の微小構造体crossingは,脳の機能回復や機能移動を説明しうる構造であり,脳機能の根幹に関わる発見であると考えられます。また,ネットワーク臓器としての脳の理解に極めて重要な知見であり,今後の脳研究に大きな影響を与えることが期待されます。
図1. 大脳の白質解剖とcrossingの所見
上図:脳表層を除去した解剖図。左下:crossingとこれに連なる神経線維。右下:crossingの模式図。
図2. 拡散スペクトルイメージングによるcrossingの描出
赤丸がcrossingを示しており,虹色ラインが神経線維を示す。crossingとこれに連なる神経線維が描出された。