学生・研修医の方

研究分野

脳腫瘍グループ (共同研究)

現在我々は臨床の教室内での研究のみならず、金沢大学の基礎系の研究室と協力し、様々な観点から脳腫瘍についての研究を行っています。

Gliomaにおける選択的水チャネル(アクアポリン)の発現と機能

我々は金沢大学血管分子生物学(旧第二生化学)教室と協力し、神経膠腫細胞におけるアクアポリンチャネル (AQP) の発現と機能の解析を行っています。

水分子H2Oはあらゆる細胞に分布しており、拡散で移動しますが、水分子の速い移動には選択的水チャンネル(aquaporin, AQP)が利用されています。AQPは細胞膜上に存在する膜蛋白であらゆる動植物の細胞に分布しており、これまでにAQP0~12の13種類が報告されています。GliomaにおいてもAQPの発現は認め、AQP1, 4に関してはGliomaのgradeに相関して発現も増強しています。Glioblastomaでは非常に強い発現を認めており、腫瘍の悪性度(増殖、遊走、浸潤、血管新生)に関与している可能性があることを示しました。

当教室では、あらゆる細胞に普遍的に存在するAQPの発現をコントロールすることで新たな治療戦略の可能性を探求しています。

Oishi M, Munesue S, Harashima A, Nakada M, Yamamoto Y, Hayashi Y. Aquaporin 1 elicits cell motility and coordinates vascular bed formation by downregulating thrombospondin type-1 domain-containing 7A in glioblastoma. Cancer Med. Apr 6. 2020

細胞外小胞を介した神経膠腫の進展機構の解明

金沢大学ナノ生命科学研究所の華山力成教授の教室と協力し、細胞外小胞による神経膠腫の進展(浸潤・転移)機構を解明することに成功しました。

細胞外小胞は体内のほぼ全ての細胞が分泌する微粒子で, 分泌細胞に特異的なタンパク質や核酸・脂質などを含有しています。これらの構成成分は細胞・疾患ごとに異なっている為、血液や尿などの体液から採取した細胞外小胞は、病気の早期発見や予後診断のバイオマーカーとして期待されています。また、細胞外小胞はこれらの分子を周囲の細胞へと送り届けることで様々な応答を引き起こし、種々の生命現象や疾患の発症に関与することが示されています。

我々は、神経膠腫の進展における細胞外小胞の関与を検討しました。悪性神経膠腫は脳腫瘍の中で最も悪性度が高く, 手術や放射線治療・抗がん剤治療を組み合わせた集学的治療を施しても平均生存期間が約2年と非常に予後が悪い腫瘍です。その為、その進展機構の早急な解明と新規治療法の開発が望まれています。

腫瘍が分泌する細胞外小胞が、腫瘍関連分子WT1を腫瘍周囲の細胞へと送達することで新たな血管を作り出し、 腫瘍が浸潤・転移を起こしやすい環境を構築することを見出しました。本研究により、神経膠腫の進展に細胞外小胞が深く関与しており、その産生を抑えることで、腫瘍の浸潤・転移を抑えることができる可能性が示されました。更に、神経膠腫の早期発見や予後診断、新たな治療法の開発が期待されます。

Tsutsui T, Kawahara H, Kimura R, Dong Y, Jiapaer S, Sabit H, Zhang J, Yoshida T, Nakada M, Hanayama R. Glioma-derived extracellular vesicles promote tumor progression by conveying WT1. Carcinogenesis May 28, 2020

エクソソームを用いた新規治療薬の開発

エクソソームは細胞外小胞の一種で、特異的な分子を内包し、かつ、表面には多数のたんぱく質が発現しています。その表面タンパクの発現を操作することで、標的細胞への効率的な薬剤伝達や、情報交換が可能と考えられています。

現在、このようなエクソソームの特徴を利用し、新しいグリオーマ治療薬の開発に取り組んでいます。