研究分野
総論
当教室では基礎研究、臨床研究を積極的に進めています。研究を通じて、日常の臨床に必要な論理的思考を身に付けることは医師にとって必須であると考えています。研究教育は指導医が責任をもって行います。今日ある医学はすべて先人の基礎研究の礎の上に成り立っています。自身が研究をすることで医学の根本を理解し、かつ自身が医学の進歩に貢献して欲しいと考えています。
医学部学生
研究に興味のある学生を随時受け入れています。講義や部活動の合間に実験室で実験を行うことで、実験理論を学べるでしょう。
大学院生
教室員には2-4年間の研究期間を設けています。研究の好き嫌い、得手不得手は自分で手を動かしてみないと分からない場合が多いのが実際です。自身の判断で研究が不向きと考えていた大学院生も研究に適性を見出し、能力を伸ばす場合があります。研究は実に魅力的で、世界で初めての知見を自分が一番先に見つけることの喜びは格別です。それが実際の診断や治療に応用できる日がくることを想像するとみんなワクワクするでしょう。また、実験で培う理論構築の学びはその後の臨床にも役立ちます。研究の視点を持って臨床に向かうことには大きな意義があります。
国内留学生
国内の施設からの留学生も受け入れています。各人の背景や希望と所属先との相談で期間や研究内容を決定します。
海外留学生
国際貢献と教室員との切磋琢磨を願い、海外の留学生を広く受け入れています。多くの場合は4年間で基礎研究論文を1-2報出して、大学院を卒業します。これまで途中で挫折してドロップアウトした留学生はいません。
他科の大学院生
脳神経外科医だけでなく、希望があれば他科の大学院生も受け入れます。各人の希望に合わせて研究プロジェクトを検討します。現在は病理医1名が大学院生として脳腫瘍研究に携わっています。
研究内容
大きくは脳腫瘍研究と脳血管障害研究があります。
脳腫瘍研究には悪性脳腫瘍の悪性形質に関与する分子メカニズムに関わる分子生物学的、細胞生物学的実験があります。また覚醒下手術を応用して神経ネットワークを明らかにする研究があります。MRI画像を使用した画像統計解析や屍体脳を使用した白質解剖を行います。
脳血管障害研究はくも膜下出血、脳梗塞の動物モデルと使用した基礎研究と臨床データを使用する流体力学研究があります。
当教室には、脳腫瘍、脳血管障害各分野の研究経験が豊富なエキスパートがおり、それぞれの指導医のもと世界レベルでの研究が推進されています。また、多くの他分野の共同研究者がこれをサポートし、上質のプロジェクトになっています。脳はまだまだ未知の部分が多く、21世紀は脳の時代であることを実感できるでしょう。
学位研究はできるだけ本人が臨床で得た疑問を解決するようなテーマを尊重し、自身の関心領域で行えるよう配慮します。その方が長続きし、挫折しにくいと考えているからです。研究を行うに当たっては、研究のアイデア・構想、実験、結果解析、結果解釈、英文論文作成、投稿、査読者への返事など、学ぶべき数多くのステップがあります。最初から一人で研究をできる人はいませんので、指導医と検討し最初に設定したテーマを遂行する過程から、これらのステップを確実に学んでほしいと思います。これが完了した後に、自身が新たに着想したテーマや、最初に行った研究に関する、より発展的なテーマについて取り組んでもらいます。
研究をしっかりまとめ上げるにはかなりの苦痛が伴います。特に初めての時は、実験しても実験してもデータが出ずに途方に暮れることがあるでしょう。ここでくじけてはいけません。明けない夜はないのです。研究を通じて一つの成功体験をして欲しいと願っています。この体験はその後の臨床でも有効に働きます。本人の強い熱意が必要であることはいうまでもありませんが、指導医は若い医師の熱意を見捨てません。是非強い意志をもって学位を取得して欲しいと思います。
学位を取得し、脳神経外科専門医となった後には国内留学、海外留学の希望を叶えたいと思います。留学先については困ることはありません。私を含め海外留学経験のある教官には海外に多くの友人がいます。留学時にともに研究した仲間が色々な国で独立して独自の研究を行っています。そこで博士研究員として研究を行うことは可能です。また、自身の力で留学先を探すのも良いでしょう。教室全体で応援します。
最近の共同研究
# 脳機能の根幹に関わる脳表層の微小構造を発見!
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/79256
# 分子ナノゲート「核膜孔複合体」の特定分子の発現抑制で脳・脊髄腫瘍の制御に成功!
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/77302
# 腫瘍摘出手術において隠れた血管を感知するグリッパーを開発
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/76256
# 中枢神経系転移での分子標的薬耐性のメカニズムを解明
-他の分子標的薬併用で耐性を克服-
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/75296
# 愛情ホルモン「オキシトシン」の分子作用メカニズムを解明!
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/65488
最近の学位論文
筒井泰史
- Tsutsui T, Kawahara H, Kimura R, Dong Y, Jiapaer S, Sabit H, Zhang J, Yoshida T, Nakada M, Hanayama R.
張 家康(留学生)
- Zhang J, Furuta T, Sabit H, Tamai S, Jiapaer S, Dong Y, Kinoshita M, Uchida Y, Ohtsuki S, Terasaki T, Zhao S, Nakada M.
Gelsolin inhibits malignant phenotype of glioblastoma and is regulated by miR-654-5p and miR-450b-5p.
Cancer Science Apr 23, 2020
Shabierjiang Jiapaer(留学生)
- Jiapaer S, Furuta T, Dong Y, Kitabayashi T, Sabit H, Zhang J, Zhang G, Tanaka S, Kobayashi M, Hirao A, Nakada M.
Identification of 2-fluoropalmitic acid as a potential therapeutic agent against glioblastoma.
Curr Pharm Des [Epub ahead of print] Apr 28, 2020
刘 晓亮 (留学生)
- Liu X, Kinoshita M, Shinohara H, Hori O, Ozaki N, Nakada M.
Does the superior fronto-occipital fascicle exist in the human brain? Fiber dissection and brain functional mapping in 90 patients with gliomas.
Neuroimage Clin. 25:102192, 2020
大石正博
- Oishi M, Munesue S, Harashima A, Nakada M, Yamamoto Y, Hayashi Y.
Aquaporin 1 elicits cell motility and coordinates vascular bed formation by downregulating thrombospondin type-1 domain-containing 7A in glioblastoma.
Cancer Med. Apr 6. 2020
会田泰裕
- Aida Y, Kamide T, Ishii H, Kitao Y, Uchiyama N, Nakada M, Hori O.
Soluble receptor for advanced glycation end products as a biomarker of symptomatic vasospasm in subarachnoid hemorrhage
J Neurosurg. [Online ahead of print] Nov 1. 2019
清水 有
- Shimizu Y, Harashima1 A, Munesue S, Oishi M, Hattori T, Hori O, Kitao Y, Yamamoto H, Leerach N, Nakada M, Yamamoto Y, Hayashi Y.
Neuroprotective effects of endogenous secretory receptor for advanced glycation end-products in brain ischemia.
Aging and Disease 11: 547-558, 2020
北林朋宏
- Kitabayashi T, Dong Y, Furuta T, Sabit H, Jiapaer S, Zhang J, Zhang G, Hayashi Y, Kobayashi M, Domoto T, Minamoto T, Hirao A, Nakada M.
Identification of GSK3β inhibitor kenpaullone as a temozolomide enhancer against glioblastoma.
Sci Rep 9: 10049, 2019
河原庸介
- Kawahara Y, Furuta T, Sabit H, Tamai S, Yu D, Jiapaer S, Zhang J, Zhang G, Oishi M, Miyashita K, Hayashi Y, Nakada M.
Ligand-dependent EphB4 activation serves as an anchoring signal in glioma cells.
Cancer Letters 449: 56-65, 2019
南部 育
- Nambu I, Misaki K, Uchiyama N, Mohri M, Suzuki T, Takao H, Murayama Y, Futami K, Kawamura T, Inoguchi Y, Matsuzawa T, Nakada M.
High pressure in virtual postcoiling model is a predictor of internal carotid artery aneurysm recurrence after coiling
Neurosurgery 84: 607-615, 2019
董 宇(留学生)
- Dong Y, Furuta T, Sabit H, Kitabayashi T, Jiapaer S, Kobayashi M, Ino Y, Todo T, Teng L, Hirao A, Zhao SG, Nakada M.
Identification of antipsychotic drug fluspirilene as a potential anti-glioma stem cell drug. Oncotarget 8: 111728-111741, 2017
古田拓也
- Furuta T, Sabit H, Yu D, Miyashita K, Kinoshita M, Uchiyama N, Hayashi Y, Hayashi Y, Minamoto T, Nakada M.
Biological basis and clinical trial of glycogen synthase kinase-3β-targeted therapy by drug repositioning for glioblastoma.
Oncotarget 8: 22811-22824, 2017 金沢大学学長賞
吉川陽文
- Yoshikawa A, Kamide T, Hashida K, Ta HM, Inahata Y, Takarada-Iemata M, Hattori T, Mori K, Takahashi R, Matsuyama T, Hayashi Y, Kitao Y, Hori O.
Deletion of Atf6α impairs astroglial activation and enhances neuronal death following brain ischemia in mice.
J Neurochem. 132: 342-53, 2015
田中慎吾
- Tanaka S, Nakada M, Yamada D, Nakano I, Todo T, Ino Y, Hoshii T, Tadokoro Y, Ohta K, Ali MA, Hayashi Y, Hamada JI, Hirao A.
Strong therapeutic potential of γ-secretase inhibitor MRK003 for CD44-high and CD133-low glioblastoma initiating cells.
J Neurooncol 121: 239-250, 2015