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プレス情報

2021年06月25日
プレス情報-前頭傾斜路の後部の切断は、急性期の運動機能障害を引き起こす

当科と共同で多数の研究、論文発表を行われている金沢大学リハビリテーション科助教の中嶋理帆先生が先日発表した、神経線維の一種である前頭傾斜路の機能についての研究論文をご紹介いたします。筆者から論文の要旨が届きましたので以下に掲載させていただきます。

 

金沢大学では右前頭葉機能の解明に着目した研究を行っています。今回注目した神経線維、前頭斜走路(Frontal aslant tract: FAT)は、前頭葉内(上前頭回内側から下前頭回)を走行する神経線維です。本神経線維の存在は2012年に金沢大学から初めて報告しました(Kinoshita M, et al. J Neurosurg. 2012)。

これまでに,左FATは主に言葉の流暢性に関係することが分かっていますが、右FATがどのような役割を担っているのかについては分かっていませんでした。そんな中,私たちは右FATを解剖学的構造に基づいて3つの成分(前方
・中間・後方)に分け、各々の成分の役割について画像統計解析を用いて調べました。右前頭葉に関わる種々の高次脳機能と運動機能を調べた結果、後方FATが術後急性期の運動障害に関与していることが分かりました。しかし、右FATの損傷による運動障害は一過性であり、回復しうるものでした。本研究結果は脳神経外科手術の方針の決定や、術後に生じた麻痺の回復の可能性を予測する上で有用と考えられます。

中嶋理帆

上記論文は認知神経学に関する雑誌である「Brain and Cognition」に投稿されました。詳細な内容は下記リンクからご確認ください。

Disconnection of posterior part of the frontal aslant tract causes acute phase motor functional deficit Nakajima R, et al. Brain and Cognition. 2021

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0278262621000725?via%3Dihub