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プレス情報

2020年05月07日
プレス情報-分子ナノゲート「核膜孔複合体」の特定分子の発現抑制で脳・脊髄腫瘍の制御に成功!

金沢大学ナノ生命科学研究所/新学術創成研究機構のリチャード・ウォング教授と当教室の中田光俊教授が共同研究を行った論文、”Nucleoporin TPR (translocated promoter region, nuclear basket protein) upregulation alters MTOR-HSF1 trails and suppresses autophagy induction in ependymoma”が、2020年3月24日に米国科学誌『Autophagy』のオンライン版に掲載されました。

今回は金沢大学のホームページでの研究トピックでも紹介された本研究内容について掲載いたします。

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金沢大学ナノ生命科学研究所/新学術創成研究機構のリチャード・ウォング教授,医薬保健研究域医学系脳神経外科学の中田光俊教授らの研究グループは,小児に好発する脳および脊髄の腫瘍である上衣腫(脳や脊髄にできる悪性腫瘍の一つ。脳室を覆う細胞(上衣細胞)から発生したがん)において高い発現を示している核膜孔複合体(細胞核を覆う膜にある穴である核膜孔を構成するタンパク質の集合体。普段は細胞質と核の間の物質輸送を担う)の特定因子を抑制することにより,オートファジー(細胞が持つ細胞内のタンパク質を分解する仕組みの一つ)を活性化し,上衣腫を制御できることを発見しました。

上衣腫に対する治療法は,小児にとって負担の大きい摘出手術と放射線治療が一般的であり,有効な化学療法の確立が望まれています。これまでに核膜孔複合体タンパク質の1つであるTPRが上衣腫において増加していることが報告されていますが,分子メカニズムは明らかになっていませんでした。

本研究では,まず細胞レベルでTPRの発現を抑制することにより,オートファジーが活性化することを見いだしました。次に,TPRの発現を減少させた上衣腫細胞をマウスに移植したところ,上衣腫の成長が抑制されました。さらに,上衣腫細胞を移植したマウスに免疫抑制作用を持つ化合物ラパマイシンを投与することにより,TPR発現が抑制されるとともに,オートファジー誘導が起こり,上衣腫の腫瘍形成が抑制されることを明らかにしました。

これらの知見は将来,上衣腫における新たなバイオマーカーや治療法の確立に役立つことが期待されます。

図. 上衣腫内分子メカニズム

TPRの発現が,熱ショックタンパク質の発現制御に関わる転写因子HSF1を発現させることで,細胞内シグナル伝達で重要な役割を果たすJNKシグナル伝達経路を介してオートファジーの調節を司るタンパク質複合体mTORの活性化を制御し,上衣腫の進展に関わっている。