プレス情報
2022年01月28日
プレス情報-日本語の漢字・仮名はそれぞれ別の白質神経ネットワークにより管理される
当科特任助教である玉井先生が先日発表した、言語機能と白質神経ネットワークに関する研究論文をご紹介いたします。筆者から論文の要旨が届きましたので以下に掲載させていただきます。
この度、脳と言語機能に関する原著論文が海外雑誌「Brain Structure and Function」に掲載されました。昨今、言語は古代エジプトで使用されていたヒエログリフなどの文字そのものに意味を有する「形態文字」と、アルファベットなどの文字そのものに意味を持たない「表音文字」に大別されています。日本語の漢字は形態文字、仮名は表音文字に分類されており、日本語は2つの文字が混在している世界でも稀な言語です。最近の脳機能に関する研究で、形態文字と表音文字の音読に関する脳皮質の局在は異なる可能性が示されていますが、皮質下の神経線維がどのように走行しているかは分かっていませんでした。今回我々は、覚醒下手術中に漢字もしくは仮名、どちらか一方のみの失読が生じる事象があることに着目し、各失読点と脳神経線維との関連性について解析・検証を行いました。結果、漢字失読点は下縦束に沿って存在し、一方で仮名失読点は下縦束に加えて弓状束、後方上縦束および下前頭後頭束の集簇部位に存在することがわかり、漢字・仮名の音読に関わる神経線維がお互いに干渉しない別個なものであることが判明しました。今回の発見が脳と言語機能の理解、ひいてはより良い治療法の確立への一助となれば幸いです。
玉井 翔
上記論文は脳機能に関する雑誌である「Brain Structure and Function」に投稿されました。詳細な内容は下記リンクからご確認ください。
Two different subcortical language networks supporting distinct Japanese orthographies: morphograms and phonograms.