日々のこと
2024年11月04日
モンゴルに思いを馳せて
2024年10月23日 モンゴル国立医科大学学長Prof. Damdindorj Boldbaatar、モンゴル国立医科大学附属病院モンゴル日本病院院長Dr. Adilsaikhan Mendjargal、Dr. Bayasgalan Tumenbayar、Dr. Oyuntugs Byambasukhが金沢大学を来訪され、脳神経外科にも来て頂きました。
これをきっかけにモンゴルの歴史や情勢について勉強してみました。
モンゴルはソ連の崩壊と共に1990年代に社会主義から民主主義に移行し、現在経済発展著しい国です。1人当たりの国民総生産からは下位中所得国に分類されるようですが、2023年の経済成長は7%と報告されており、さらなる発展のポテンシャルを秘めた国のようです。日本の4倍の国土に約300万人が暮らす国で、鉱物資源に富む内陸国です。人口の約3分の1は首都ウランバートル周辺に住み、それ以外の地域は過疎地となっています。
モンゴルの医療状況に関してはJICAの国別分析レポートを参照すると、モンゴルの医療問題を垣間見ることができる。
以下、JICA国別分析ペーパー モンゴルより引用しまとめる(独立行政法人 国際協力機構 2023 年1月)
・医師、看護師、助産師の大学等卒業後の研修制度が確立されていないために、臨床経験が少ない医療従事者が多い。医師の卒後研修を中心にカリキュラム改善等実施体制の強化が進んでいるものの、臨床実習の機会は依然不十分であり、とくに地方では顕著である。
→臨床実習を行うモデル病院の確立により、研修に関する知見や機会の普及が期待される。
・地方部と都市部ウランバートルの医療サービスへのアクセス格差がある。
→大学卒業後の若手医療従事者を地方で勤務させることで地方への医師の配置を進めている。しかし首都で勤務を希望する医師が多く、都市部に医療施設・人材が集中している。
・家庭医や地域病院など1次2次レベルで提供される医療サービスへの不信感がある。正確な診断や医療サービスの提供が可能な1次・ 2次医療の人材育成、また情報管理システムの構築が追い付いていない。多くの患者がウランバートルの3次医療へ直接アクセスしている。
→医療サービスの地域格差の是正には、医療従事者の研修制度の強化による医療従事者の診断能力の底上げが求められる。
・3次医療へのアクセス集中による医療サービスの質の低下が懸念される。
→医療情報の集約化による効率的なリファラルシステムの整備に力を入れている。
・母子保健指標においては、都市部の乳児死亡率、妊産婦死亡率ともに改善傾向
→インフラ未整備の地方部ではまだ改善がみられていない。
・経済成長に伴い非感染性疾患が増加傾向にあり、疾病構造の変化に対応した医療体制の構築が求められる。
→脳血管疾患や悪性腫瘍などにも対応できる高度な治療技術の普及や予防の強化も重要である。
つまり、医療体制、研修制度などあらゆる分野での底上げが必要な状況のようです。
2019年10月JICAの日本の無償資金協力で建設されたモンゴル国立医科大学附属モンゴル日本病院が開院しました。モンゴル初の医科大学附属属病院であり、なおかつモンゴル国立医科大学はモンゴル唯一の国立医科大学であり、この附属病院は医療人材育成の拠点となること、また最新の機材も導入され、がん、心臓病などの非感染性疾患をはじめとする疾病に対する高度な医療サービスを提供することが期待されています。
今回、我々は現在の脳神経外科の医局の特徴や研修、指導システムなどをプレゼンテーションしました。モンゴルで増加している脳卒中や脳腫瘍の治療協力体制、研修体制、指導など互いに高め合っていけるよう協力できればと思います。越えなければいけない壁はいくつかあるようですが、連絡を取りあい、よりよい関係を築いていきたいと考えています。
大石正博