学生・研修医の方

研究分野

脳腫瘍グループ

悪性グリオーマ(膠芽腫)は、頭蓋内腫瘍の中で予後不良な腫瘍です。この治療抵抗性である悪性グリオーマに対して研究を行っています。

グリオーマ幹細胞株の樹立

癌をはじめとする悪性腫瘍では「がん幹細胞」の存在が明らかとなっています。当科では摘出した腫瘍の一部からグリオーマ幹細胞の抽出を行い、数種類のグリオーマ幹細胞株を樹立しています。このグリオーマ幹細胞を標的とした新たな治療法の開発や治療抵抗性のメカニズムの解明などに関する研究を展開しています。

①グリオーマ幹細胞に対して抗腫瘍効果を有する既存薬の探索

我々はがん進展制御研究所遺伝子・染色体構築研究分野 平尾敦教授グループと協力してグリオーマ幹細胞に対して抗腫瘍効果を有する既存薬の探索(ドラッグリポジショニング)を行っています。すでに数種類の薬剤が候補として挙がっており臨床応用への可能性を検討しています。

現在は、2種類の候補薬で研究をしています。

②グリオーマ幹細胞に対する新たな分子標的治療の探索

悪性グリオーマの制御には細胞増殖、細胞浸潤、幹細胞性の維持を破綻させる必要があると考えています。我々はそれぞれのメカニズムに関わる様々なシグナルを探索しています。また、シグナル解析はドラッグリポジショニングにおける抗腫瘍効果のメカニズムを解析することにも重要になります。

・Eph受容体/ephrinリガンドシステムと悪性グリオーマ

チロシンキナーゼファミリーのひとつであるEph/ephrinシステムは正常細胞において細胞骨格や細胞運動性、アポトーシスなどの多様な細胞メカニズムに影響を与え、組織恒常性維持など胚発生過程における中心的な働きをしています。Eph及びephrinは、共に細胞膜上に存在しリガンドから受容体へのシグナル伝達 (forward signaling)だけではなく、受容体からリガンドへもシグナル伝達 (reverse signaling)を行うユニークな分子で、グリオーマを含む全身の様々な悪性腫瘍において腫瘍形成や浸潤、血管新生、転移、がん幹細胞の自己複製能に関与していることが報告されています。Eph/ephrinシステムのメカニズムを解明し新たな治療法の発見を目指しています。

 

・Notchシグナルと悪性グリオーマ

Notchシグナルは細胞間同士のシグナル伝達であり、多くの臓器で発現しており幹細胞維持や細胞の分化方向をつかさどる重要な機能を担っています。一方、悪性グリオーマを含めた固形癌や血液がんでは、シグナル蛋白変異や過剰発現などが知られています。Notchシグナルは非常に多くのシグナルと関与していることも特徴であり、がんの標的シグナルとされています。我々も悪性グリオーマとNotchシグナルの研究をしています。

 

③悪性グリオーマのバイオマーカー探索

グリオーマには他の固形癌腫と異なり、血液腫瘍マーカーが同定されていません。我々は、グリオーマの患者さんの血液や髄液からバイオマーカーとなりうるタンパク質などを研究しています。