来院される方

対象疾患と治療

頭蓋底手術

頭蓋底腫瘍とは

頭蓋底とは頭蓋骨底面のことを指し、下の図のように前頭蓋窩・中頭蓋窩・後頭蓋窩に分類され、これらの部位から発生する腫瘍を頭蓋底腫瘍といいます。頭蓋底腫瘍は主に髄膜腫、神経鞘腫といった良性腫瘍の割合が多いです。頭蓋底には12の脳神経・主要な頭蓋内動脈(内頚動脈、椎骨動脈など)・脳幹といった重要な構造物があります。頭蓋底腫瘍はこれらを圧迫、巻き込むように増大します。従って、脳神経症状、脳幹圧迫症状などで発見されることが多いです。治療適応は、腫瘍の大きさだけでなく、脳幹圧迫程度、脳神経症状などによって総合的に判断します。

当院での治療指針
1) 腫瘍周囲の構造物を3次元的に評価した手術計画

CT、MRI、脳血管撮影画像を融合した3D構築画像を術前に作成し、当科のカンファレンスで入念に議論を重ねたうえで、手術計画を立てています。手術中もナビゲーションを用いて実際の術野と照らし合わせることで、安全にかつ最大限摘出できる範囲を確認しながら、手術を行っています。

田中図3

2) 神経機能を温存するための術中神経モニタリング

頭蓋底手術では、腫瘍を摘出する過程で、頭蓋底に存在する大切な神経や動脈を損傷しないことが重要です。安全に手術を完遂するため、私たちの施設では、麻酔科の先生や検査技師の協力のもと、脳神経刺激モニタリング(主に顔面神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経)、聴力モニタリング(聴性脳幹反応)、運動機能モニタリング、視機能モニタリングなど、症例に応じて多数のモニタリングを駆使しています。

1)、2) を併用しながら、腫瘍と重要構造物(神経、血管、脳幹など)の剥離が困難な場合は、神経機能温存を優先し意図的に腫瘍を一部残存させることがあります。

*聴神経鞘腫などの小脳橋角部腫瘍に関して

この部位の腫瘍は顔面神経を圧迫しているため術中顔面神経刺激をして神経を確かめながら手術を行っています。

当院では、顔面神経刺激に加えて持続顔面神経モニタリングも行いながら腫瘍摘出術を施行しています。この方法をとることによって顔面神経障害のリスクをさらに低減させることが可能と考えています。

田中図4

代表症例
1) 前頭蓋底腫瘍
両側視力・視野高度障害、高次機能障害で発症した前頭蓋底髄膜腫です。視機能モニタリングを行い腫瘍摘出。術後は、症状は段階的に回復。

田中図5

2) 中頭蓋窩腫瘍
味覚障害と右顔面感覚異常で発症した右三叉神経鞘腫。右錐体骨前方を経由し腫瘍摘出を施行した。症状は術後改善した。

田中図6

3) 後頭蓋窩腫瘍
ふらつきと左失調運動で発症した左聴神経鞘腫。顔面・舌咽・迷走神経刺激モニタリングと持続顔面神経モニタリングを行い、腫瘍を摘出した。術後、神経障害なく、症状も回復した。 田中図7