金沢大学脳神経外科

MENU

学生・研修医の方

研究分野

脳血管障害グループ

脳血管障害グループでは主にくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤、脳梗塞の原因である脳虚血について研究を行っています。具体的な研究内容について説明します。

脳動脈瘤に対する新たな塞栓物質の開発

脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こす非常に重要な疾患です。現在の治療のスタンダードとしては、開頭術による脳動脈瘤クリッピング術、血管内治療によるコイル塞栓術があります。最近は治療デバイスの発達とより低侵襲な治療が推奨されることから、血管内治療であるコイル塞栓術が増えてきています。コイル塞栓術の現在の問題点は、瘤内をうまく塞栓できても、動脈瘤開口部において血管壁構造の再構築が生じずコイルがむき出しの状態が続くことです。それにより、瘤内へ再度血流が入ることによる動脈瘤の再発という問題が生じます。われわれの教室では以上の問題点を克服するために、動脈瘤開口部における血管壁構造の再生を試みる研究を進めております。

脳動脈瘤に対する新たな塞栓物質の開発(1)脳動脈瘤に対する新たな塞栓物質の開発(2)脳動脈瘤に対する新たな塞栓物質の開発(3)

 心臓血管外科領域では、冠動脈バイパス手術などで使用する小口径人工血管などの代用血管開発の研究が盛んですが、その素材としてはあえてたくさんの小孔が存在するものを使用するほうが、生体内では血管壁構造を再構築しやすいとの報告が多数存在します。これをヒントに、われわれはセルロースという炎症惹起の少ない成分からなり、小さな孔をたくさん持った多孔質のビーズ(cellulose porous bead: CPB)をラットの外頚動脈瘤モデルを用いて動脈瘤内に留置することで、開口部における血管壁構造の再構築に成功しました。現在は、再生した血管壁構造の分析と、より早くより正常血管壁構造に近い血管壁の再生・再構築のために検討を重ねています。

脳動脈瘤の流体力学的解析

エネルギー損失と動脈瘤再発血液の圧力やエネルギー量を数値化できる数値流体力学 (CFD: computational flow dynamics) 解析を行うための準備を進めています。動脈瘤の中で血液が渦をつくると、そこでエネルギー損失がおこります。この動脈瘤内のエネルギー損失と、動脈瘤に血管内治療を行った後の再発に関連があるのではないかと着目しています。この研究によって血管内治療を行う前に再発のしやすさが分かれば、治療方針を立てる上で有用であるので解析準備を進めています。

遅発性神経細胞死の現象解明

Cell Death Differ (2004) 11: 403-15遅発性神経細胞死とは、右の図のように、海馬のCA1領域において、虚血後2-3日で神経細胞の減少と萎縮(アポトーシス)が生じる現象です。我々は、esRAGEというたんぱく質を血管内に投与することで、遅発性神経細胞死を防ぐことができるのではないかと考え実験を行いました。
RAGEには大きく分けて膜型RAGEと可溶型RAGE(esRAGEなど)に分かれます。膜型RAGEは下の図のように1回膜貫通型タンパクでV,C,Cの3つのドメインを持ちVドメインにリガンドが結合することにより虚血時の炎症シグナル伝達に関わっています。一方esRAGEは膜型RAGEのスプライスバリアントで競合受容体として膜型RAGEにリガンドが結合するのをブロックしています。

J Diabetes Investig (2012) 3: 107–14遅発性神経細胞死を生じさせるモデルとしてBCCAOモデルというものが一般的に用いられています。BCCAOモデルとは、マウスの両側の総頸動脈を20分間結紮し、再灌流させることにより海馬のCA1領域に遅発性神経細胞死を生じさせるモデルです。今回我々もそのモデルを用いて、esRAGEを静脈内投与したモデルと投与していないモデルで遅発性神経細胞死がどのように変わってくるのかということについて実験を行いました。海馬CA1領域の、神経細胞数計測やアポトーシスを検出する染色(カスパーゼⅢ染色など)を行うことでesRAGEの遅発性神経細胞死に対する効果を研究しています。

脳虚血と神経保護の研究

脳虚血と神経保護の研究小胞体は、蛋白質・脂質の生合成、Ca恒常性の維持を司る細胞内小器官ですが、エネルギー枯渇、Ca異常、蛋白質の合成過多など、細胞内環境の悪化は小胞体への変性蛋白質の蓄積をもたらし、いわゆる小胞体ストレスを引き起こします。これに対し細胞は、小胞体膜を起源とするストレス応答、unfolded protein response (UPR)を活性化し、小胞体内環境を改善することで細胞内恒常性を維持しています。
脳虚血において小胞体ストレスが惹起され、UPRの活性化が神経保護に繋がること等が報告されていますがそれらの詳細なメカニズムについては不明な点が多いとされています。私たちは、脳虚血における小胞体ストレスのメカニズム解明のため主要転写因子ATF6αをノックアウトしたマウスを用いて解析を行いました。

脳虚血と神経保護の研究(2)マウスの永久的中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルおよび培養アストロサイトを用いた検討を行い、特に、小胞体ストレス応答における主要転写因子ATF6αの重要性について解明を試みました。MCAOモデルはマウスの側頭骨部を開頭し、直下に見える中大脳動脈を凝固切断する方法を用いています。
野生型マウス、及びAtf6αノックアウトマウスを用いてMCAOを作製すると、Atf6αノックアウトマウスで梗塞体積および神経細胞死の増加が認められました。更に、同マウスではアストロサイトの活性化・グリア瘢痕形成が減弱し、非梗塞巣への組織障害の拡大が確認されました。
またAtf6αを欠損したアストロサイトではグリア瘢痕形成に関連するリン酸化STAT3(p-STAT3)およびGFAPの発現が減弱していることが明らかになりました。

以上の結果より、ATF6αは脳虚血下で起こるアストロサイトの活性化、グリア瘢痕形成を介して、神経保護において重要な役割を担っていることが示されました。

Yoshikawa A, et al., J Neurochem (2015) 132: 342-53

pagetop