金沢大学脳神経外科

MENU

学生・研修医の方

研究分野

神経内視鏡分グループ

内視鏡グループでは主に脳下垂体腫瘍、脳脊髄液の産生吸収と機能について研究を行っています。臨床面における私たちの取り組みと、具体的な研究内容について説明します。

経鼻アプローチによる神経内視鏡手術

2005-2014年の治療実績
下垂体腺腫 234例
ラトケ嚢胞  32例
頭蓋咽頭腫  20例
他の頭蓋底腫瘍(髄膜腫・脊索腫など) 14例

低侵襲で、広角な視野が得られるという内視鏡の利点を生かした経鼻的経蝶形骨洞手術を行っています。機能性下垂体腺腫(GH、ACTH、TSH、PRL等産生性腫瘍)では、手術単独による治癒を目指した治療を行っています。薬物治療が第一選択とされるPRL産生腫瘍による不妊症においても、手術による腫瘍摘出では、効果が速やかでかつ確実であることが利点と言えます。その他、前頭蓋底や斜台部の腫瘍に対しても、視神経、内頚動脈、下垂体茎部などの重要構造物が直接観察可能であるという特徴を生かし、ナビゲーションシステムを併用した拡大蝶形骨洞手術にも積極的に取り組んでいます。

脳室内・脳実質内手術

2005-2014年の治療実績
第3脳室底開窓術  72例
脳内(脳室内)出血除去術 41例
脳室内腫瘍摘出(生検)術  3例
脳内嚢胞開窓術  10例
脳膿瘍洗浄術    5例

硬性鏡(Oi-Handy Pro, Stortz社製)および軟性鏡(VEF-type V, Olympus社製)を使い分けながら、低侵襲かつ摘出率の鈎状を目指した手術を行っています。シャント離脱を目的とした第3脳室底開窓術、低侵襲およびドレナージ期間短縮を目指した脳内および脳室内血腫除去術などにも積極的に取り組んでいます。

資格

脳神経外科専門医を取得後に、神経内視鏡学会技術認定医を取得します。当科では、北陸地区の基幹病院であるという特徴を生かし、毎週のように多種豊富な症例を経験することができます。技術認定医は2名在籍しており認定医申請に必要な技術指導を受けることができます。

研究テーマ
脳下垂体腫瘍に関する研究 

1) 下垂体腫瘍における頭痛の発症機序の解明頭痛は視力視野障害、下垂体機能不全とともに下垂体腫瘍による主な症状の1つです。頭痛の発生機序としては腫瘍周囲の硬膜に分布する神経への圧迫や炎症の波及などが有力ですが、頭痛の発生機序に関しては明らかな定説はありません。われわれは当科にて治療された下垂体腫瘍のデータから頭痛の性状や腫瘍の画像的な特徴、手術中の腫瘍の性状や出血の有無、腫瘍内圧の結果を解析して頭痛の発生機序を明らかにすることを試みるものです。
下垂体腫瘍はトルコ鞍内で硬膜にて覆われているため、腫瘍の圧迫による硬膜の伸展が痛みを生じると考えられています。われわれはトルコ鞍内圧を上昇させる腫瘍、トルコ鞍内および周囲構造の因子を検討しています。腫瘍の硬さ、内部の出血、鞍隔膜欠損部の大きさ、海綿静脈洞内への腫瘍の浸潤度、蝶形骨洞内骨化の程度等に関してCTやMRIにて検討しています。頭痛発症の下垂体腫瘍に対して、摘出術の効果が予測できれば非常に有用であると考えています。

2) 下垂体腫瘍の周囲構造に対する影響に関する臨床研究下垂体腫瘍は頭痛、視力視野障害、下垂体機能低下などを発症することが知られています。周囲に存在する鞍隔膜などの硬膜、視神経、動眼神経など海綿静脈洞内に存在する脳神経、正常下垂体などである。また上方の前交通動脈や側方の内頚動脈をも圧排する。また稀には内頸動脈の狭窄および閉塞を生じて脳梗塞を生じた例も報告されています。しかしながら、その腫瘍の体積、内部の性状や伸展形式と周囲構造の圧迫、偏位の程度の評価や臨床症状との関係などの周囲構造へ影響を及ぼす因子に関しては十分な検討がなされていません。
本研究は下垂体腫瘍が周囲構造へ及ぼす影響を明らかにすることが目的です。手術前後の臨床症状、血液検査、画像検査から下垂体腫瘍が周囲構造に対してどのような影響を及ぼすかを後方視的に解析してその検討を行うものです。
当院の下垂体腫瘍プロトコールにて撮像されたデータにて、下垂体腫瘍およびその上記以外の蝶形骨洞内骨構造として、洞内隔壁、鞍底、骨隆起などの周囲構造との解剖学的構造を評価しています。 

3)脳腫瘍の血管内皮細胞における選択的水チャンネルの発現と機能脳腫瘍において血管新生は腫瘍が増殖するために必要不可欠な因子です。近年選択的水チャンネル(aquaporin, AQP)が血管新生に強く関わっているという報告があります。AQPは細胞性浮腫を制御する膜蛋白ですが、私たちの悪性脳腫瘍における研究では、腫瘍細胞の増殖のエネルギー源として不可欠なグルコースによる解糖系の活性化のために生じた乳酸アシドーシスと細胞性浮腫を緩和する機能を果たしていると推測されています。脳腫瘍の血管内皮細胞にもAQPが発現しており、腫瘍の増殖への関与が示唆されています。
血管内皮細胞はグルコースを最も取り込みやすい解剖学的な位置関係にあるため、そのエネルギーを有効に利用して、血管新生に用いています。その一方では、細胞性浮腫を生じるためにAQPを発現して細胞の機能を維持して血管新生を行っている。本研究では、脳腫瘍およびその周囲細胞におけるAQPの機能および発現の局在、発現量を考察することで、AQPの脳腫瘍治療における新たなターゲットとしての可能性を探求することを目的としています。 

4)下垂体腫瘍摘出術前後の中枢性尿崩症におけるMRI信号変化の研究中枢性尿崩症(DI)は、下垂体腫瘍摘出術の周術期合併症の一つで、下垂体後葉からのバゾプレッシン分泌障害により発症します。バゾプレッシンはMRIのT1強調画像で下垂体後葉の高信号により存在が示されます。DIのMRI所見は、この消失や下垂体柄における高信号の出現が報告されています。これは、後葉におけるバソプレッシンの消失やバソプレッシンの移動障害による下垂体柄における貯留を示しています。DIの改善に伴い後葉の高信号は回復する場合がある一方、下垂体柄の高信号に関する詳細はまだ不明です。
preliminary な調査では、下垂体柄の高信号域の形態は、1)末梢のみの限局型、2)下垂体末梢側のびまん型、3)下垂体柄全体のびまん型に大別され、この3型は下垂体柄におけるバソプレッシンの移動障害部位の分布を示していると考えています。つまりこの形態により尿崩症の改善時期が異なることが予測されます。この下垂体柄の高信号の形態によって尿崩症からの回復時期が予測できれば、患者にとって意義深いものとなります。 

5)脳圧センサーを用いた下垂体腫瘍内圧測定の臨床研究脳下垂体はトルコ鞍と呼ばれる頭蓋底の骨のくぼみに存在しており、その上部に鞍隔膜が蓋をする解剖学的な位置関係にある。下垂体腫瘍はトルコ鞍を拡大するように増大し、さらに鞍隔膜正中部において下垂体柄が通過するための欠損部を介して鞍上部に伸展します。直上の視神経を圧迫することで視力視野障害を、脳下垂体を圧迫することで下垂体機能不全を、鞍隔膜などの硬膜を伸展して頭痛を発症すると推測されています。腫瘍内圧の上昇と腫瘍の大きさとの関係や臨床症状の発現との関係がごくわずかに報告されているのみです。
本研究は、下垂体腫瘍によって生じる視力視野障害や頭痛と下垂体腫瘍内圧との関係を明らかにすることが目的です。経鼻的下垂体腫瘍摘出術中に脳圧センサーを用いて腫瘍内圧を測定して、臨床症状や術前の頭部MRIによる画像所見により圧の上昇を生じる解剖学的構造との関係を調べるものです。しかし腫瘍内圧の上昇を生じる解剖学的な因子に関しての検討は未だなされておらず、データを蓄積してその検討を行っています。 

6)間脳・下垂体腫瘍摘出術前後におけるオキシトシンの血中濃度測定とその高次脳機能障害との関連性の検討オキシトシンは視床下部の室傍核・視索上核で産生され、下垂体柄を通過して下垂体後葉より分泌されるホルモンであり、脳内では、扁桃体などに作用して社会的行動を制御し、高次脳機能や認知機能に影響を与えると言われています。近年、それらの遺伝子や分子の欠損・異常が、高次脳機能障害の原因ではないかと考えられており、オキシトシンの点鼻により高次脳機能障害に改善が認められる事も報告されています。
間脳・下垂体腫瘍においてはその摘出術後に高次脳機能障害が生じること約15%の症例で生じることが知られています。本研究ではまず間脳・下垂体腫瘍摘出術前後の血液中のオキシトシン濃度を測定し、手術による高次脳機能障害の有無を術前後で評価スケール(HDS-R: 長谷川式簡易知能評価スケール、MMSE: Mini-Mental State Examination、JAHQ :Japanese Adult Hypopituitarism Questionnaire)を用いて評価します。その際にオキシトシン血中濃度と高次脳機能を評価することで、オキシトシンの分泌不全が高次脳機能障害と関連するかを検討しています。

7) 前頭蓋底および副鼻腔の解剖学的構造に基づいた手術方法の検討

脳脊髄液の産生吸収と機能に関する研究

1)人工髄液を溶媒とした凝固活性の検討脳内出血に脳室内出血を合併した場合には予後が悪くなることが知られている (Hanley, Stroke 2009)。脳室内出血の除去が予後改善効果につながるとのエビデンスはないものの、ドレナージ留置期間の短縮、慢性水頭症移行の減少、ICU在室期間の短縮などの効果があるとされています (Oertel, J Neurosurg 2009, Komatsu, Neurol Med Chir 2010, Chen, World Neurosurg 2011)。当科では積極的に急性期の内視鏡下での脳室内血腫除去術を行っており、その際の術中潅流には人工髄液(アートセレブ、大塚工場)を使用してきました。
今後、血腫の早期除去のため、ウロキナーゼやtPAなどの血栓溶解薬、また血液凝固阻止剤を併用することが想定される、人工髄液(アートセレブ)を溶媒として、これらの作用に与える影響を調査します。また、血液凝固の単純化モデルとして、脳神経外科手術で頻繁に用いられるフィブリン糊の凝固作用に与える影響も合わせて調査し、これらにより非侵襲的な手技を追究していきます。

2)脈絡叢における新たな脳脊髄液産生機構の解明 脈絡叢における新たな脳脊髄液産生機構の解明脳脊髄液がなぜ存在するのかは依然として明確な答えはありません。しかし脳脊髄液の役割としては、ホルモンや神経因性伝達物質の髄液循環での標的組織への運搬、頭部外力に対する緩衝作用などが報告されています。脳脊髄液の産生は脈絡叢でされていると報告されています。選択的水チャンネルであるaquaporin(AQP)-1が生体内で脈絡叢上皮細胞に最も多く存在することは、それを示唆する所見ですが、その役割に関しては未だ解明されていません。
私たちはこれまでの自らのAQP-1に関する研究成果から、脳脊髄液産生機序の仮説を立てました。上皮細胞内での解糖系により生じる乳酸アシドーシスを緩和するために重炭酸緩衝系が活性化され水が産生されます。AQP-1の脳室側の基底膜上での優位な偏在によって脳室内に脳脊髄液として効率よく排泄されるというものです。脳脊髄液の産生機構の解明は、脳脊髄液の産生と吸収のバランスが崩れることで発症する水頭症の病態を明らかにすることに繋がるものであり、非常に重要と考えられます。

3)MRIによる頭蓋内コンプライアンス測定結果の検証研究正常圧水頭症と呼ばれる病態では、頭蓋内圧のわずかな上昇によって(ΔP)によって、脳実質の体積に変化が生じ(ΔV)、脳室拡大が生じると言われています。この変化はこれまで髄液腔内に生理食塩水を注入することで実際に測定されてきましたが、近年、髄液腔内へ流出する血液および脳脊髄液の流量をMRIにて測定することが理論上可能となりました。しかし、非侵襲的に得られた結果が、どの程度の信頼性があるのか、また症状や手術への効果とどの程度関連があるのかはまだ知られておらず、データの蓄積が期待されているのが現状です。
本研究は、非侵襲的な頭蓋内圧測定検査の信頼性を明らかにすることが目的です。MRI phase contrast法にて撮像したデータより、非侵襲的頭蓋内コンプライアンスを測定します。水頭症の手術時に、脳室内へカテーテルを挿入し、人工髄液少量を注入して、脳室内圧の変化の測定を血圧や心拍などのモニター下に施行します。MRIで得られた頭蓋内コンプライアンスの測定結果を、手術時に得られる実測値と比較し、その妥当性を検証します。

4) 特発性中脳水道狭窄症の発生時期および機序に関わる検討 5) シャント離脱に関する検討

pagetop