金沢大学脳神経外科

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対象疾患と治療

脳下垂体腫瘍や水頭症に対する内視鏡手術

当科では2005年より、下垂体腫瘍、頭蓋底腫瘍、脳室内腫瘍、脳出血、脳膿瘍、水頭症といった疾患に対して、神経内視鏡を用いた手術を積極的に行っており、その手術件数は総数で540件に達しています。
脳神経外科領域では、以前より顕微鏡を用いた繊細な技術が要求される手術が行われてきました。ここに内視鏡手術が加わることにより、これまで以上に患者さんにとって負担が少なく、より細やかな手術を行うことができるようになりました。本稿では、症例数の多い脳下垂体腫瘍と水頭症を例として解説します。

1.下垂体腫瘍に対する神経内視鏡手術

私たちは、機能の温存・改善を目的とした脳腫瘍手術の確立を目指すとともに、従来の機能局在・神経ネットワークに加え、新たな機能局在・神経ネットワークを神経解剖学、神経画像学、および術中電気生理学に基づき解明中です。言語機能、運動機能などの基本的脳機能に加え、心の理論、視空間認知、ワーキングメモリ(作業記憶)に代表される遂行機能(すいこうきのう)に注目し、複雑な高次脳機能における新たな神経機能ネットワークの解明を目指しています。 下垂体は前頭葉の下の部分(両目の奥、鼻の奥)に位置するため、頭全体から見れば中心部に位置する最も深い場所と言えます。しかし上唇(クチビル)の内側から、あるいは鼻の穴を経由して脳を下側から見上げる形で下垂体に到達する方法が開発され、顕微鏡を使用した手術が盛んになってきました。この部分には、視神経や内頚動脈といった重要構造物が存在し、非常に微細な技術が必要とされます。今日では、鼻孔から内視鏡を挿し込みながらこれまで以上に腫瘍に接近した視野を得ることにより、患者さんにとって負担の少ない手術ができるようになりました。

対象疾患

下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、ラトケ嚢胞、鞍結節髄膜腫、
斜台部脊索腫など

例)下垂体腺腫の場合

下垂体を圧迫することによるホルモン分泌異常、視神経を圧迫することによる視野狭窄や視力低下、また腫瘍内出血による頭痛などで発症します。片方の鼻孔から奥に位置する蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と呼ばれる空間まで内視鏡を挿し込みます。内視鏡によって得られる広角な視野をモニターで確認した後に、両側の鼻より深い部分での作業に適した手術器具を用いながら腫瘍を確実に摘出していきます。

手術前/手術後

2.水頭症に対する神経内視鏡手術

水頭症は頭蓋内の液体成分である脳脊髄液が過剰に貯留し、脳を圧迫する病態です。急激に発症した場合は意識障害から死にいたることがあります。ゆっくりと進行した場合も脳実質を圧迫し、認知機能障害、歩行障害、尿失禁などを呈するようになります。水頭症に対しては、これまで「シャント手術」により余分な脳脊髄液を腹腔内や血管内に吸収させることが最も確実な治療法でした。しかし、シャント手術には感染、閉塞といった長期的な問題が見られること、また脳脊髄液を適量だけ排出するための調節が困難などの欠点がありました。そこで近年、「脳脊髄液の吸収能力が損なわれていない」と考えられる患者さんに対して、内視鏡による髄液通行路の作成手術が行われるようになりました。

対象疾患

中脳水道狭窄症・モンロー孔閉塞症・第4脳室出口症候群・脳室内腫瘍・脳室内出血などによる閉塞性水頭症
(対象年齢は概ね1歳以上)

例)中脳水道狭窄症の場合

頭蓋骨に直径約1cmの穴を開け、前頭葉の中でも高次機能や運動に関係しない部分より脳内にアプローチします。脳室と呼ばれる、脳脊髄液貯留空間内では専用の内視鏡を用いて、水頭症の原因となっている閉塞部分を迂回した脳脊髄液の交通路を作成します(矢印)。シャントに頼らず、水頭症の諸症状を解決することができます。

手術:第3脳室底開窓術後。開窓部を介した髄液流が認められる(黄矢印)。第3脳室底は拳上。当科では神経内視鏡学会技術認定医が中心となり、高度な神経内視鏡手術の提供と開発を心がけています。

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